トランプ米大統領は5月20日、新たなミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」の開発構想の詳細を発表しました。トランプ氏の在任中に運用を始めるとする一方、巨額の費用がかかることも明らかになっています。防衛研究所の前田祐司研究員は「実現可能性、戦略的安定性に関するリスク、巨額のコストから生じる機会損失という三つの課題がある」と指摘します。
――ゴールデンドームの特徴は何でしょうか。
高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)やパトリオット地対空誘導弾など従来のミサイル防衛システムに加え、極超音速ミサイルや、通常の弾道ミサイルよりも低い高度の衛星軌道で目標に到達する「部分軌道爆撃システム(FOBS)」など新たな脅威にも対応できるシステムを開発し、米本土の包括的な防空システムとする構想です。
これまでのミサイル防衛では対応が困難とされていたブーストフェーズ(発射直後の上昇段階)でも、迎撃システムを宇宙に配備して対応するとしています。
――極超音速ミサイルは迎撃が不可能とも言われています。
機動性の高い極超音速ミサイルを正確に捕捉・迎撃するシステムや、これまでになかった宇宙配備型の迎撃システムの開発における技術的課題をクリアする必要があることを踏まえると、トランプ大統領の在任期間である残り3年余の間に運用を始められるのか、疑問もあります。
軌道上の物体は高速で周回するので、全世界を常時カバーするには数百から1千機にも上る多数の探知用衛星と、最大2千機程度の迎撃システムが必要だと言われています。仮に運用を開始できても、体制を維持するには継続的に多額のコストがかかります。
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